「配偶者居住権」に関する課税関係が概ね明らかに!

 またまたブログの更新が疎かになってしまっています…^^;)

 このところ本当に有難いことにいただくお仕事が増えて、かなり手一杯な状態が続いておりまして、なかなか投稿する時間も作れないでいます。

 とはいえ、相続に関してお伝えしておいた方がよい事柄はその後も沢山出ていますので、今回はそのうちの大事な点を一つだけでも取り上げておこうと思います。

 それは、以前からこのブログでも何度か触れている、来年4月から施行予定の「配偶者居住権」についてです。

 

 「配偶者居住権」は、昨年7月の民法改正によって新たに創設されることになった権利ですが、それを受けて2019年度税制改正によってその具体的な評価方法が相続税法(第23条の2)の中に定めれられたことは、以前の投稿「平成31年度・税制改正大綱から」でお示しした通りです。

 そして、この配偶者居住権が設定された建物の敷地部分に相当する「敷地利用権」については、底地部分の「敷地所有権」とともに一定の要件さえ満たせば、相続財産の宅地等の評価に適用可能な『小規模宅地等の特例』が各々の価額割合に応じてどちらにも適用できるということが、その後の租税特別措置法施行令(第40条の2⑥項)によって明らかになりました。

 

 更に今年7月、配偶者居住権の二次相続における課税関係についても、相続税法基本通達(9-13の2)によってその詳細が明らかにされました。

 以前からこの点は、一次相続において配偶者居住権と敷地利用権を妻が取得(残る建物・敷地の所有権は子が取得)し、妻が死亡して建物・敷地の所有者である子への二次相続が生じた際に、「一次相続で建物・敷地の所有権から控除された配偶者居住権・敷地利用権の課税関係がどうなるのか(新たに相続税などが課税されるのか)」ということが懸念されていたところです。

 しかし、今回の基本通達によれば、配偶者の死亡により配偶者居住権は消滅するため、「その部分について新たに相続税などの課税関係が生じることはない」ということです。この取扱いは配偶者の死亡に限らず、配偶者居住権の存続期間を有期に設定してその期間が満了した場合も同様です。

 

 今回のこの通達の内容は、今後の相続対策においてとても重要な意味を持っています。

 つまり、一次相続で配偶者に居住権と敷地利用権を設定して相続させれば、残りの所有権を取得する子の相続財産額を抑えられるだけでなく、二次相続でも配偶者が取得した居住権・敷地利用権は消滅してその部分で子に相続税や贈与税がかかることはないわけですから、配偶者居住権を設定した方が少なくとも税負担の面から得策であることは明らかです。

 もともと配偶者には、相続税の『配偶者の税額軽減』という特例がありますから、配偶者居住権を設定することで配偶者の相続財産が幾らか増えたところで、殆どのケースで配偶者に相続税がかかることはないでしょう。

 

 税務に携わる者としては「本当にそんな整理でいいの???」という気もしますが、配偶者居住権が施行される来年4月以降は、相続対策としてこの「配偶者居住権」を活用する人がかなり増えると思われます。

 当事務所としては今後の動向なども窺いつつ、時期を見計らって既存のお客様には相続対策の見直しを兼ねてご説明して回らないといけないなと考えているところです。