【相続のイロハ(第30回)】 総括 ~まとめ~

 ここまで30回に亘って相続や生前対策に関する基本的事項を解説してきましたが如何でしたでしょうか?

 

 内容的には、平成27年からの税制改正で新たに相続税の課税対象(納税義務者)になるであろう方々を対象に、初心者の方でも理解していただけるよう極めて基本的な事項に絞って解説してきました。

 勿論、実際の相続の場面においてはより複雑で難解な論点もありますが、一般の方々がそのような点まで理解される必要はなく、そこは税の専門家である我々税理士にお任せいただきたい部分ですので、何か不安な事や分からない事があれば遠慮なくご相談いただければと思います。

 

 最後に、私が今まで色んな方々からご相談を受けたり、実際の相続事案を通じて感じていることで、セミナーの纏めとしてもよくお話させていただいている内容を本コラムの総括として掲載させていただきます。

 

(1)これからは何もしなければ相続税はかかる時代!

 平成27年から相続税の基礎控除額が一律40%引き下げられたことによって、課税対象(納税義務者)が大幅に増えています。新聞・雑誌等でも既にご案内の通りですが、三大都市圏近郊で平均的な一戸建てをお持ちの方であれば実際に相続税がかかるか否かは別にしてまず申告は必要になると考えていただいて間違いありません。

 つまり、今まで相続税はご自分とは無縁だと思われていたかもしれませんが、これからはもう何もしなければ相続税はかかる時代なのです。

 そのため、ご自身の財産は自らの意思で戦略的に次世代に承継していくことが重要で、その手段・方策を知っているか・知らないかの違いだけでお子様方の将来の税負担に大きな格差が生じてしまうということをまずはご認識下さい。

 

(2)生前対策で万人に効く王道なし!

 前回・前々回にご説明した様な生前対策にも幾つかの方策がありますが、「これだけやっておけば大丈夫!」という万人に効く王道はないということも認識していただく必要があります。

 どの方策が最善かは、その方の家族構成(相続関係)や財産状況によって変わりますので、十人いれば最善策も十通りあるはずです。少なくとも私がご相談を受ける際には、常にそのような意識で面談に臨んでいます。

 そのためにも、家族構成(相続関係)や財産状況といったご自身の置かれている現状を正しく把握しておくことが何より大事(出発点)になるのです。

 

(3)相続が開始してから選べる選択肢は殆どない!

 いざ相続が開始してしまうと、遺族の方々は法要行事や行政手続に追われてしまって時間的な余裕がないということもありますが、遺産分割や財産承継に関して税制上選べる選択肢も殆どありません。

 それは相続税法における適用判断の基準時点の殆どが”相続開始時”とされているからです。

 だからこそ相続対策は生前からしっかり検討・準備して計画的に実施することが肝要で、早過ぎるということは決してありません。

 

(4)周囲に煽られて安易に生前対策に奔らない! 

 次世代に財産を承継すること、あるいは相続税額を削減することばかりを優先して、安易に生前贈与などの対策に奔らないということも超・高齢社会が深耕する今の時代には極めて重要です。

 昨今、”老後破産”という言葉をよく見聞きしますが、残された人生のご自身の生活資金と財産承継のバランスを十分考えて対策されないと本末転倒の結果になりかねません。

 そのような事態を避けるためにも、生前対策は一時的な相続対策として捉えるのではなく、ご自身のライフプランニング(人生設計)の一部としてお考えになり、経済的にも多少の余裕を持たせて計画することが大切です。

 

 

 本コラムがご覧いただいた方々の相続に関するお悩みの解決に何か一つでもお役に立てれば甚だ幸いです。