【相続のイロハ(第25回)】 その他の手続① ~所得税・消費税の準確定申告~

 前回「相続税の申告・納付」について解説しましたが、相続に伴って遺族(相続人)が行わなければならない手続には相続税の他にも幾つかあります。

 その中でも特に期限が定められているものが”所得税・消費税の準確定申告”です。 

 

 被相続人に死亡した年の1月1日から死亡日までの間に所得があり、かつ確定申告義務がある場合は、相続人”相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内”所得税の準確定申告書被相続人の所轄税務署に提出する必要があります(所得税法125条1項)。

 確定申告書を提出すべき被相続人がその翌年1月1日から申告書の提出期限までに当該申告書を提出しないで死亡した場合も同様です(所得税法124条1項)。

 準確定申告は通常の確定申告書と同じ用紙で行いますが、相続人が2人以上いる場合は、相続人全員の連名で「死亡した者の○年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)」を添付する必要があります。

 尚、これは確定申告義務がある場合に限られていますので、被相続人が給与所得者(1か所から給与を支給されていた者で、かつ給与等の支給額が2,000万円以下の者に限る)で給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下の場合や、被相続人が年金受給者(公的年金等の収入金額が400万円以下の者に限る)で公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合には準確定申告を行う必要はありません

 

 また、被相続人が個人事業者で、消費税の納税義務がある場合は、相続人”相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内”消費税の準確定申告書被相続人の所轄税務署に提出しなければなりません(消費税法45条3項)。

 確定申告書を提出すべき被相続人が課税期間末日の翌日から申告書の提出期限までに当該申告書を提出しないで死亡した場合も同様です(消費税法45条2項)。

 準確定申告書には、相続人全員の連名による「付表6 死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書」を添付する必要があります。

 尚、こちらも消費税の納税義務がある場合に限られていますので、被相続人が亡くなられた年分に免税事業者(その前々年の課税売上高が1,000万円以下等)であった場合には準確定申告を行う必要はありません。 

 

 これら所得税・消費税の準確定申告を行った結果、納付すべき税額がある場合は、相続税の申告においてその納付税額は債務控除の対象になります。

 一方、還付される税額がある場合は、その還付税額(還付加算金を除く)は被相続人の相続財産に含まれます

 

 この他にも、所得税・消費税に関しては、

 「個人事業の開廃業等届出書」〔所得税〕

 「個人事業者の死亡届出書」〔消費税〕

 

 更にその事業を相続人が承継する場合には、継承者(相続人)が改めて

 「個人事業の開廃業等届出書」、「青色申告承認申請書」〔所得税〕

 「課税事業者選択届出書」、「簡易課税制度選択届出書」、「課税期間特例選択・変更届出書」〔消費税〕

 

などの各種届出書を所轄税務署に提出する必要がありますのでご注意下さい。詳しくは税理士にご相談下さい。