【相続のイロハ(第2回)】 法定相続人② ~配偶者・子のケース~

 前回は「法定相続人」の基本的な考え方を解説しましたが、今回はその中でも最も多い法定相続人が被相続人の”配偶者と子(もしくは配偶者のみ・子のみ)”のケースについてより詳しく見ていきたいと思います。

 

 

(1)配偶者が内縁関係者(例:内縁の妻・夫等)の場合

 民法では「被相続人の配偶者は常に相続人となる」(民法890条)と定められていますが、ここで言う配偶者とは”被相続人と正式な婚姻関係にある者”、つまり戸籍法に定める届出(婚姻届)を行って法律上正式な夫婦として認められる関係にある者と考えられています。

 従って、婚姻の届出を行っていないために法律上正式な夫婦と認められない、いわゆる内縁関係にある者は、実態は婚姻の届出を行った法律上の夫婦と何ら変わりがないとしても、民法890条で言う配偶者には該たらないものとして相続権が認められていません。即ち、内縁関係者は法定相続人にはなりません。

 

(2)配偶者が離婚・再婚している場合

 また、配偶者が民法で言うところの相続人としての地位を有するか否かは、”相続開始時点(被相続人が死亡した時点)”の被相続人との間の身分関係によって決まります。

 従って、既に離婚していて正式な婚姻関係にはない者(前夫又は前妻)が被相続人となった場合、かつての配偶者としての相続権は当然認められず、被相続人の法定相続人にはなりません。

 反対に、再婚によって新たに正式な婚姻関係を結んだ者(後夫又は後妻)が被相続人となった場合にはその者の配偶者として相続権が認められ、被相続人の法定相続人となります。

 

(3)子供が後妻(又は後夫)の連れ子の場合

 一方、再婚した場合でも後妻(又は後夫)が先夫(又は先妻)との間の子供(いわゆる”連れ子”)を有している場合、その子供と再婚相手(後夫又は後妻)の間には自然血族関係がありませんので、連れ子に法定相続人としての相続権は認められません。しかし、その子供を再婚相手と”養子縁組”させることによって、その子供にも法定相続人としての相続権を与えることができます

 尚、この養子縁組(特別養子縁組を除く)を行った場合、その子供は再婚相手(養親)の法定相続人としての地位を有するとともに、先夫又は先妻(実親)の法定相続人としての地位も有することになります。

 

(4)子供が非嫡出子の場合

 正式な婚姻関係にない男女間に出生した子を”非嫡出子”と言いますが、非嫡出子の場合、母親とは出産の事実を通じて明確な親子関係が生じますが、父親との間に法律上の親子関係は当然には発生しません。

 そのため、非嫡出子の父親が被相続人となる場合、そのままではその子に法定相続人としての相続権が認められません。しかし、このような場合でも、生前に父親がその子が自分の子供であることを”認知”していれば法定相続人としての相続権を与えることができます

 

(5)子供が胎児の場合

 被相続人の相続開始時に被相続人の子が既に懐胎されていた(”胎児”が存在していた)場合、民法では「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」(民法886条1項)としてその胎児にも法定相続人としての相続権が認められています。但し、その胎児が生きて生まれなかった場合は、相続させる必要がなくなることから、上記規定は適用しないこととされています(民法886条2項)。

 

 

 このように、一口に法定相続人が被相続人の”配偶者と子”とは言っても、夫婦・親子関係が多様化・複雑化している昨今、実際の現場では色んなケースがあり、その都度個別に判定・判断を要することもあります。

 相続開始時に被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本を取り寄せて確認するのは、上記のような相続開始時における被相続人と相続人の身分関係を明らかにするために行っているのです。