”おしどり贈与”は是か非か?

 今年も早10月に入り、残すところ3か月になりました^^;)。

 ついこの前まで尋常ではない暑さで熱中症を心配していたかと思ったら、日に日に涼しくなって最近は日が落ちるのも随分早くなりましたからね。きっとあっという間に秋を通り越して冬になるんでしょうね。。。

 近頃はホントに季節感がないというか、夏と冬しかないような気がします(^^)。

 

 さて、民法改正の影響か、新聞やインターネットで”おしどり贈与”の記事を見かけることがこのところ増えました。

 以前から私の事務所でも、

  「”おしどり贈与”って本当に得なの?」、あるいは「”おしどり贈与”をする必要がホントにあるの?」

といった疑問・質問を受けることがありましたが、今回はその点を整理して私なりの考えをお示ししたいと思います。

 

 そもそも”おしどり贈与”とは、贈与税の配偶者控除(相続税法第21条の6)のことで、

 ①その年において婚姻期間が20年以上である配偶者から

 ②居住用不動産(自宅の土地もしくは家屋)又は居住用不動産を取得するための金銭を贈与により取得した者が

 ③取得した日の翌年3月15日までに当該居住用不動産を居住の用に供し、

   かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合、

  又は同日までに当該金銭をもって居住用不動産を取得して居住の用に供し、

   かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合、

その年の贈与税については、課税価格から最大2,000万円(基礎控除額を加算すると2,110万円)を控除できるというものです。つまり、この3つの要件を満たせば、最大2,110万円まで非課税で贈与できるということですね。

 

 更にこの贈与は、後々贈与者の相続開始前3年以内の贈与に該当することになったとしても、相続税の計算上は生前贈与加算の対象にならないとされていますので、配偶者に対する相続対策としては一見お得な感じがします。

 ただ、ここで気を付けておかなければならないのは、

 ・ 居住用不動産の評価額は2,110万円を超えるケースが多く、超える分については通常の贈与税が課税される

 ・ 不動産を贈与により取得した場合は、不動産取得税(3%)や所有権移転登記に際し登録免許税(2%)がかかる

ということです。

 

 一方で、配偶者には相続税にも配偶者の税額軽減(相続税法第19条の2)という特例があって、ご承知の通り、配偶者が相続により取得した財産価額のうち、”遺産総額の法定相続分”と”1億6,000万円”のいずれか多い方までは非課税になりますので、配偶者が居住用不動産を相続しても殆どの場合相続税がかかることはありません。

 しかも、不動産を相続により取得した場合は不動産取得税はかかりませんし、登記に際してかかる登録免許税も贈与に比べて低額(0.4%)で済みます。

 ですから、配偶者の法定相続分が1億6,000万円を超えるような高額ケースは別として、通常は配偶者に居住用不動産をわざわざ生前に贈与しなくても、相続させた方が税金面では得策と言えます。

 

 では、何故今になって”おしどり贈与”が取り沙汰されているのでしょうか?

 

 それは、遺言や遺産分割協議で遺産の分け方について相続人間で争いがない場合は確かにその通り(相続した方が得)なのですが、争いがある場合には少し違う問題が生じる恐れがあるからです。

 相続税の計算(相続税法)とは全く別の次元で、そもそも相続がどうあるべきかを定める現行の民法では、相続人の法定相続分を計算する際、こうした生前贈与は特別受益として加算(持ち戻し)されることになっているため、居住用不動産を配偶者に生前贈与したか相続させたかに関わらず、いずれにしろ居住用不動産が配偶者の相続分の一部を構成することになってしまいます。

 そのため、法定相続分が争われた場合、配偶者は居住用不動産以外の金融資産の配分が否が応にも少なくなってしまい、しばらくして配偶者が生活資金に困窮してしまうケースも少なくありませんでした。

 

 そこで、このような事態を解消するために改正民法(2019年7月迄に施行予定)では、婚姻期間が20年以上である者が配偶者に遺贈又は生前に贈与した居住用不動産は法定相続分を計算する際の特別受益に該たらない(持ち戻し免除の意思表示があった)ものと推定することとされました。

 このことによって、税金面では相続の方が得策であることに依然変わりはありませんが、相続人間で遺産分けが争いになりそうな場合には生前贈与を選択する余地・意義がにわかに出てきたというわけです。

 

 相続のケースは十人十色ですので必ずしも一概には言えませんが、以上のようなことから、

 ● 相続人が配偶者しかいない場合

 ● 相続人が配偶者以外に複数いても、遺産分けで争いになる可能性が極めて低い場合

 ● 仮に争いになったとしても、配偶者に居住用不動産以外の相続財産(金融資産)をある程度配分できる場合

であれば、居住用不動産を生前贈与するメリットはないのではないかと私は考えています。