「タワマン節税」に歯止め?

 今週24日(日)の日経新聞に『「マンション節税」防止~相続税 高層階、評価額上げ~』という記事が掲載されていました。

 それによると、総務省と国税庁が、相続税や贈与税、固定資産税の課税標準となるマンションの評価額を高層階になるほど引き上げる等の方策検討に着手し、早ければ2017年に法令改正、2018年1月から実施する見通しとのことです。

 

 以前に連載したコラム「相続のイロハ」の中でも解説しましたが、現在、相続税・贈与税における財産評価では、宅地は原則”路線価”によって、家屋は”固定資産税評価額”によって評価することになっています。

 対象財産がマンションであった場合、宅地(所有権)は路線価で評価したマンション敷地全体を、家屋はマンション1棟の固定資産税評価額を床面積(専有面積)の割合に応じて按分することで所有者毎の評価額を算定します。

 

 しかし、マンションの販売価格は、床面積以外にも日照や風通し、景観等の要素が考慮されて高層階になるほど高くなるのが通常です。

 例えば、都心の高層マンションで同じ間取り・床面積の住戸でも、1階なら5,000万円ですが最上階になると1億円なんていう物件はよくあります。

 それでも、現在定められている財産評価方法によれば、単純に床面積のみで按分計算するために1階も最上階も評価額は同額(例えば2,000~3,000万円)になります。

 このため、入居世帯数の多いマンションは高層階ほど財産の圧縮効果が高いとして節税目的で購入される方がこの数年非常に増えており、そのような一部の資産家のみが優遇されるような方策を抑制するため今回の改正検討に至ったというわけです。

 

 具体的な評価方法(階による増減幅)は今後検討されるようですが、果たしてどういったものになるのでしょうか。

 

 増減幅が設けられるとすれば家屋の評価に係る部分のみと思われますが、都心マンションの販売価格に占める家屋の割合はせいぜい50%前後、しかも固定資産税評価額は時価の70%程度に始まって時の経過とともに減価していくものですから、余程の増減幅を設けるか工夫しないと節税対策の抑止力にまではならないのではないかと思うのは私だけでしょうか。

 あまり過度に増加幅を設けて本当に消費者の購買(投資)意欲を削いでしまうと、国際情勢や円高・株安・原油安に揺れる今の日本経済に悪影響を及ぼす恐れもあります。

 反対に、階によって評価の減額もあり得るとするならば、今度は高層マンションでも低層階に人気が集中するなんてことがあるかもしれません。

 

 いずれにしても、相続の現場においては少なからず影響がありますので、今後の検討経過を注視しておきたいと思います。