【相続のイロハ(第20回)】 相続財産(その他)の評価方法

 これまで土地や家屋、預貯金、有価証券といった主たる相続財産の評価方法について、基本的な部分を解説してきました。

 実際の相続の場面においては、例えば土地であれば”「小規模宅地等の特例」の複数対象地の選択適用”であったり”雑種地”の評価、有価証券であれば”取引相場のない株式”の評価など、重要な評価項目・方法は他にもありますが、一般の方に理解していただかなければならないような内容ではないと思いますので、あくまで一般的なご家庭で通常保有されている財産に絞って、その基本的な評価方法に留めましたのでその点はご了承下さい。

 

 その意味で、この他にも一般的なご家庭で保有されている財産として考え得るものを最後にまとめて簡単にご紹介しておきます。

 

(1)自家用車

  一般家庭で使用する自家用車(四輪・二輪)は財産の分類上”一般動産”に該当します。

 

 一般動産は、原則、”1個又は1組”毎に評価します(財産評価基本通達128)。

 そしてその価額は、原則、”売買実例価額””精通者意見価格”等を斟酌して評価することとされています。

 但し、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない場合は、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価します(財産評価基本通達129)。

 

 そのため自家用車の場合は、保有されていた車の型式や製造年月、走行距離等から、同種のものが中古車市場で幾らで売買されているかを参考にして評価額を見積もることが一般的です。

 

(2)家庭用動産(家財)

  一般家庭で使用する家具や什器等の家庭用動産も”一般動産”に該当します。

 

 従って、(1)と同様、原則は”1個又は1組”毎に、”売買実例価額”、”精通者”意見価格”等を斟酌して評価することになります。

 しかし、家庭用動産はその種類や数量も多く、1個又は1組毎に評価することは煩雑であるため、1個又は1組の価額が5万円以下のものについては一括して”1世帯”毎に評価することが認められています(財産評価基本通達128但書)。この取扱いは、家庭用動産の他、農耕用動産や旅館用動産等についても同様です。

 

 家庭用動産は、一般的なご家庭であれば通常それ程大きな金額にはなりませんが、相続税の申告において財産項目として家財が上がっていない方が却って不自然ですので、例え金額的には僅少(数万~数十万円)であっても計上しておかれるべきでしょう。

 

(3)電話加入権

 NTT等の固定電話番号を使用開始する際に支払う電話加入権は、財産の分類上”無体財産権”に該当します。 

 

 以前は電話加入権も相応の額(数万円)でしたが、昨今はその名称すら殆ど聞かなくなり、取引相場があるものとも言えないため、令和2年までは売買実例価額等を基として電話取扱局毎に”国税局長の定める標準価額”によって評価することとされていました。

 しかし、インターネット等が普及した現在はその標準価額を定める必要性も乏しくなったことから、令和3年以降は一般動産と同様に売買実例価額や精通者意見価格等を斟酌して評価することとされました(財産評価基本通達161)。

 

 尚、相続税の申告に当たっては、上記の家庭用動産に電話加入権を含めても差し支えないとなりましたので、実務的には従来のように電話加入権を個別に評価・計上することはせず、家庭用動産に含めて申告することになります。