【相続のイロハ(第14回)】 相続財産(土地)の評価方法③ ~貸宅地・貸家建付地~

 前回まではご自身で利用している宅地、即ち”自用地”の評価について解説してきましたが、今回は他人に貸し付けている宅地の評価についてです。

 

 多少財産に余裕のある方で、以前住まわれていた土地・家屋を売却せずにそのまま保有して賃貸されている方がおられますが、そのように他人に貸し付けている宅地のことを”貸宅地”といい、宅地の上に建っている家屋と共に貸し付けている宅地のことを”貸家建付地”といいます。

 これらの宅地は、貸し付けるに当たって権利金・礼金を受け取っているか否かに関わらず、少なからず借地人・借家人から宅地の利用について制限を受けることになりますので、その分を評価にも反映させるべく次のような評価方法によることになっています(財産評価基本通達25(1)、26)。

 

 【貸宅地】           自用地の評価額 × (1 - 借地権割合

 【貸家建付地】        自用地の評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合

 

 ここで”借地権割合”とは、借地人が宅地に対して有する利用上の権利の割合をいいますが、各地域の借地権割合は前々回(第12回)にもお示しした路線価図又は倍率表に記載されています。

 

 ”借家権割合”とは、同じく借家人の有する権利割合をいい、この割合は現在は全国一律30%に決まっています。

 

 また、”賃貸割合”とは、その貸家(構造上区分された複数の独立部分がある場合)の各独立部分の床面積合計に占める課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積合計の割合をいいます。例えば、賃貸マンション・アパートで全10室(同じ間取り)の貸家があり、9室が賃貸されていたのであれば、賃貸割合は90%ということです。

 尚、この賃貸割合の計算上、たまたま課税時期だけ一時的(通常1~2ヵ月程度)に賃貸されていなかったと認められる場合は、賃貸されていたものとして含めて計算して構わないことになっています。一方、貸家が一戸建ての場合はこれには該当せず、課税時期の賃貸状況のみで0% or 100%が判断されますのでご注意下さい。

 

 反対に、被相続人が他人から宅地や宅地と共に家屋を借り受けていた場合は、各々”借地権”又は”借家人の有する権利”として次のような評価を行います(財産評価基本通達27、31(1))。

 

 【借地権】           自用地の評価額 × 借地権割合

 【借家人の有する権利】  自用地の評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃借割合

 

 ここで”賃借割合”とは、その貸家(構造上区分された複数の独立部分がある場合)の各独立部分の床面積合計に占める課税時期においてご自身が賃借されている独立部分の床面積の割合をいいます。

 つまり、上述の貸宅地・貸家建付地で借地人・借家人から宅地の利用について制限を受ける分として自用地の評価額から控除した価額相当が借地人・借家人の権利の評価額になるというわけです。

 

 この他にも、他人から借りた宅地に家屋を建てて貸し付けた場合(貸家建付借地権)など、宅地の利用形態は様々あり、その形態に応じて評価方法は上記と少しずつ異なってきますが、煩雑になり過ぎるのでここでの説明は上記基本形に留めておきます。

 

 いずれにしても、上記の算式からもお分かりの通り、宅地はご自身で利用されているよりも他人に貸し付けた方が評価額が相当程度低くなります。

 昨今、相続対策として東京・大阪など都心部の新築高層マンションが注目を集め、即完売の状況が続いているようですが、終の棲家としてご自身が居住される方だけではなく、こういった背景からその物件を賃貸される方もかなりの割合でいらっしゃるのではないかと思います。

 私としては羨ましい限りですが(笑)、土地・家屋を他人に貸し付けるにも相応のコスト負担とリスクが伴いますので、もし賃貸される場合はその辺りの事もよく比較衡量された上でお決めになるのが宜しいかと思います。