【相続のイロハ(第12回)】 相続財産(土地)の評価方法① ~原則/宅地(自用地)~

 今回は相続財産の中でも金額的に占める割合が最も高い”土地”の評価方法について、基本的な事項を中心にご説明します。

 

 前回掲げた財産評価基本通達に定められている財産の種類にもあるように、まず土地は、原則その”地目”の別に評価しなければなりません(財産評価基本通達7)。具体的には以下の9つです。

 ①宅地  ②田  ③畑  ④山林  ⑤原野  ⑥牧場  ⑦池沼  ⑧鉱泉地  ⑨雑種地

 但し、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地はそのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価することが例外的に認められています。

 

 尚、この地目ですが、登記簿謄本や固定資産税納税通知書(課税明細)に記載されている地目ではなく、課税時期(相続開始時)における現況によって判定しますので注意して下さい。

 多くの場合、登記簿上の地目と利用現況は一致していますが、登記簿上の地目が”宅地”でも、実際の土地が耕作の目的に供されている場合には”田”又は”畑”として評価することになりますし、貸付駐車場として利用されている場合には”雑種地”として評価することになります。

 

 今回はこれらの中でも最も一般的な”宅地”について解説したいと思います。

 

 宅地は原則”1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)”を評価単位として評価することになっています(財産評価基本通達7-2(1))。

 この1画地の宅地とは、あくまで宅地の利用単位毎ということであって、登記簿上の1筆毎という意味ではありません。2筆以上の宅地でもそれらを居住用宅地として利用していればその全体が1画地の宅地になりますし、1筆の宅地でもその一部を居住用宅地として、残りを貸付用宅地として利用していれば、その各々が1画地の宅地ということになります。

 

 次に、宅地の地積は、課税時期における”実際の面積”により評価します(財産評価基本通達8)。

 これまた登記簿上の地積とは異なりますので注意して下さい。

 では、相続税を申告するために土地の面積を正確に測量しなければならないのかと言うと必ずしもそうではありません。土地の間口距離と奥行距離を簡易計測してみて掛け合わせた面積と登記簿上の地積が極端に乖離していなければ、登記簿上の地積で評価しても実務上はさほど問題ありません。

 

 最後に評価方法ですが、これは先日(7/4)の投稿~平成27年分・路線価が公表!~でも触れたように、

 ①路線価が付されている地域(市街化区域又は市街化調整区域)においては、

   【路線価方式】  路線価(㎡当たり) × 地積(㎡)

 ②路線価が付されていない地域においては

   【倍率方式】    固定資産税評価額 × 倍率

によって評価します(財産評価基本通達11)。

 各地の路線価及び倍率は、毎年7/1に国税庁から公表される直近の数値を使用します。

 固定資産税評価額は、その年分の固定資産税納税通知書(課税明細)等に記載されている数値を使用するか、土地の所在する市区町村に評価証明を発行してもらいます。

 

 尚、上記算式は宅地をご自身で利用されている場合(自用地)の評価方法になります。宅地を他人に有償で貸し付けている場合等については次々回解説しますが、評価方法が異なりますのでご注意下さい。

 また、①路線価方式の場合、実際には土地の形状(間口狭小・奥行長大・がけ地・不整形地)や接道状況(一方のみ・側方or裏面・三方or四方・無道路地)に応じて路線価に各種補正率を乗じた上で補正計算します(財産評価基本通達15~20-7及び付表1~9)が、かなり細かくなってしまうのでここでの説明は割愛します。

 

 更に詳細をお知りになりたい方、あるいは正確な評価額が必要な場合には専門家(税理士・不動産鑑定士等)に必ず相談するようにして下さい。