生前対策としての不動産投資は”あり” or ”なし”?

 早いものでもう6月、今年も既に半分が終わりですね。

 毎年この時期(7月初)になると国税庁から当年分の路線価が公表されますので、「今年はどうなっているかな」といつも関心を持って見ていますが、3月に既に国交省が公表した公示価格では三大都市圏の住宅地は小幅な上昇が続いていますので、恐らく今年も阪神間の路線価は横ばい、もしくは僅かながら上昇しそうですね。

 

 この傾向が続けば、相続における生前対策の必要性・重要性は依然高まるわけですが、比較的節税効果の高い生前対策に”金融資産(預貯金・有価証券等)を不動産(土地・家屋等)に組み替える”という手法が昔からあり、相続税法が改正・施行された平成27年前後から一段と注目されたこともあって、現に対策として実行されている方も少なからずいらっしゃるのではないかと思います。

 

 以前このブログでも紹介しましたが、この手法は、相続財産のうち金融資産は原則、相続開始時点の時価で評価されるのに対して、不動産は時価よりも相当程度に低い路線価や固定資産税評価額で評価されることを利用したもので、その不動産を第三者に賃貸借すれば更に評価額を減額でき、しかもその宅地に「小規模宅地等の特例」を適用できれば、最終的には時価の20~30%程度にまで評価額を圧縮することが可能になります。

 

 つまり、同じ1億円の価値を持つ相続財産であっても、金融資産であれば課税価格は1億円のままですが、不動産であれば課税価格は2~3千万円に下がるため、その分相続税額が少なくて済むというわけです。

 では、もし仮に不動産を取得するに際して銀行から借入(例えば、2~3千万円)を行ったとしたらどうでしょう?

 相続開始時点において(被相続人の)未返済の借入金は債務として相続財産から控除することができますので、その結果、1億円の相続財産の価値は実質的にゼロ(相続税がかからない)ということになります。

 

 どうですか? そのように言われると(それだけ聞くと)確かに旨い話に聞こえますよね-^^;)

 

 しかし、今のご時世にそんなオイシイ話があるわけはなく、不動産投資にも様々な費用負担やリスクが伴います。

 まず、不動産を取得するに際して不動産取得税や登記費用・仲介手数料等の諸経費が一時的にかかりますし、取得後も不動産を維持していくためには固定資産税や修繕費・管理費等の費用が毎年発生します。

 加えて、銀行から借入を行っていれば利息分を含めた借入金返済が長期にわたって必要になります。

 

 確かに、不動産を賃貸借すれば一定の賃料収入は見込めますが、余程立地条件の良い都市部の物件でない限りは借主が長期安定的に存在する保証はありませんし、仮に借主がいたとしても賃料は時の経過とともに通常下がっていきますから、徐々に賃料収入は減少していくものと考えざるを得ません。

 また、採算が取れなくなったからといって不動産を後々売却しようと思っても、取得した当初の価格では当然売れませんし、取得時と同様に売却にも相応の諸経費がかかります。

 

 このようなリスクを十分に踏まえ、長期にわたる収支計画を綿密に立てた上で不動産投資を行われるのであれば結構ですが、一時の相続対策として安易に考えて取り組まれると、将来相続人の方が思わぬ負担を強いられる恐れがありますので、私がセミナーでお話したり、個別相談をお受けする際はあまり積極的にお勧めしていません。

 

 昨年まで銀行の不動産向け融資残高は過去最高水準にまで増大し、アパート等の貸家住宅の着工件数も右肩上がりで増え続けてきましたが、今年に入ってさすがに三大都市圏でも賃貸物件の供給過剰が懸念され、景況感にも陰りが出始めているようですので、今後生前対策として不動産投資をお考えになる際は、よくよく吟味された方が宜しいかと思います。

 当事務所では、不動産の販売・管理や不動産による資産運用に精通した専門業者とも提携しておりますので、不動産投資で何かお悩み・お困りの事があればお気軽にご相談下さい。