【相続のイロハ(第26回)】 その他の手続② ~相続財産の名義変更等~

 前回に続いて、相続税の他に遺族(相続人)が行わなければならない手続として、今回は”相続財産の名義変更等”について解説します。

 前回の「所得税・消費税の準確定申告」と異なり、こちらは特に手続に期限は設けられていませんが、相続人(財産取得者)が相続財産を適正に使用・収益・処分するためには、遺産分割終了後、遅滞なく名義変更等の手続を行っておくことが必要です。

 名義変更等の手続が必要な代表的な相続財産には以下のものがあります。

 

(1)預貯金

 銀行等の金融機関では、預貯金口座の名義人が死亡すると口座を一旦凍結します。この凍結を解除するためには、口座がある金融機関窓口で必要な相続手続を行う必要があり、口座の名義を相続人に変更するか、口座を解約して払戻しを受けるかのいずれかを選択することになります。

 手続に必要な書類は、金融機関によって多少名称等が異なりますが、概ね以下の通りです。

 ①相続関係届出書

 ②該当口座の通帳・証書及びキャッシュカード

 ③被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

 ④相続人全員の戸籍謄本及び印鑑登録証明書

  ※戸籍謄本は③で被相続人との戸籍関係が確認できる相続人の場合は不要

  ※印鑑登録証明書は遺産分割協議の場合のみ必要

 ⑤遺言書又は遺産分割協議書

 

(2)有価証券

 上場株式等の有価証券を相続した場合は、配当金の受取りなど株主としての権利行使を行うためには名義書換手続が必要になります。

 この手続は、株式を発行している会社ではなく、発行元の会社が指定する株主名簿管理人(信託銀行等)又は株券を預託している証券会社窓口で行います。

 手続に必要な書類は、 金融機関によって多少名称等が異なりますが、概ね以下の通りです。

 ①口座振替申請書又は株式名義書換請求書

 ②株券(発行されている場合)

 ③被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

 ④相続人全員の戸籍謄本及び印鑑登録証明書

  ※戸籍謄本は③で被相続人との戸籍関係が確認できる相続人の場合は不要

  ※印鑑登録証明書は遺産分割協議の場合のみ必要

 ⑤遺言書又は遺産分割協議書

 

(3)不動産(土地・建物)

 土地や建物などの不動産を相続した場合も、当該不動産を売却する際や次の相続が生じた場合に備えて、当該不動産を管轄する法務局で所有権の移転登記申請を行っておく必要があります。

 この手続は、一般的には司法書士に依頼することが多いと思いますが、相続人ご自身で行うことも出来ます。

 手続に必要な書類は概ね以下の通りです。

 ①登記申請書

 ②相続関係図

  ※戸籍謄本等(原本)を返却してもらう場合には必要

 ③被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

 ④被相続人の住民票(除票)写し又は戸籍の附票

 ⑤相続人全員の戸籍謄本及び印鑑登録証明書

  ※戸籍謄本は③で被相続人との戸籍関係が確認できる相続人の場合は不要

  ※印鑑登録証明書は遺産分割協議の場合のみ必要

 ⑥相続人(不動産取得者)の住民票

 ⑦遺言書又は遺産分割協議書

 ⑧固定資産評価証明書

 

 尚、相続による移転登記には登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)がかかりますので、申請時には税額相当の収入印紙を購入するための現金が必要になります。

 後日、登記完了後に「登記済証(登記識別情報通知書)」を申請した法務局で受領すれば手続は完了です。

 

 

 上記の他にも名義変更等が必要な相続財産としては、”自動車”や”ゴルフ会員権”、”生命/損害保険契約”等もありますのでご留意下さい。