【相続のイロハ(第24回)】 相続税の申告・納付

 前回までで”課税遺産総額”、”相続税の総額”並びに各相続人毎の”納付税額”まで算定できたことになります。

 その結果、相続人に納付すべき税額がある場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内”に相続税の申告書を”納税地”の所轄税務署長に提出しなければなりません(相続税法27条1項)。

 

 ここで、”相続の開始があったことを知った日”とは、通常”被相続人の亡くなられた日”を指します。

 従って、仮に被相続人の亡くなられた日が「平成27年1月1日」の場合、10か月後の同じ日、つまり「平成27年11月1日」が申告書の提出期限ということになります。

 ちなみに、亡くなられた日が月末で10か月後に同じ日がない場合(例えば31日)は、10か月後の月の末日が提出期限になります。

 また、”納税地”とは、通常”被相続人の死亡当時の住所地”のことをいいます(相続税法62条1項)。

 従って、相続人が2人以上いる場合で各々異なる場所に居住されていたとしても、申告書を提出する場所は、各相続人の住所地ではなく被相続人の死亡当時の住所地を所轄する税務署1か所ですのでお間違いのないようにして下さい。

 この場合、相続人全員が1つの申告書に連署・押印の上、共同して提出することになります(相続税法27条5項・相続税法施行令7条)。

 

 尚、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額以下(課税遺産総額がゼロ)の場合、あるいは課税遺産総額がプラスでも各種税額控除を適用して納付税額がゼロになる場合申告する必要がありません

 但し、”配偶者の税額軽減”や”小規模宅地等の特例”等の適用を受ける場合は、申告書を提出することが要件になっていますので、たとえ特例を適用して納付税額がゼロになるとしても申告する必要がありますからその点はご注意下さい。

 

 次に、相続税の申告書を提出した者は、原則、その申告書に記載した税額を上述の”申告書の提出期限まで”に全額金銭で納付しなければなりません(相続税法33条)。

 

 しかし、金銭で一時に納付することが困難な場合は、納付期限を延長して分割納付する”延納”(相続税法38条)と、相続財産でもって納付する”物納”(相続税法41条)が認められています。

 とは言え、”延納”や”物納”は納税者が自由に選択できるものではなく、金銭での一時納付が困難である事由や延納によっても金銭で納付することが困難である事由を所定の申請書類に記載・提出して許可を受けた場合にのみ選択することが出来ます。

 期限内納付に比べて納付期限からの利子税(利息)が追加で発生しますし、手続も煩雑な上、ある程度の期間も要しますので、可能な限り金銭で一時納付されることが望ましいのは言うまでもありません。

 

 そのためにも、生前にご自身が置かれている「現状を正しく把握しておくこと」、そしてその状況に応じて「最善策を取捨選択し、計画的に準備・実施すること」が重要になるのです。