令和5年度税制改正(資産税関連)の内容と影響 ~前編~

 

 3月に入ってまだ寒い日もたまにありますが、そろそろ春の気配が感じられるようになってきましたね。

 

 現在国会で審議されている標記の税制改正法案もどうやら原案通り可決・決定されそうですので、今回はその内容について私なりの視点で二回に分けて整理・解説したいと思います。

 尚、現行の『暦年課税制度』と『相続時精算課税制度』の内容や今回の改正点個々の詳細については、既に関連各所のホームページやインターネット記事、youtube等でも色々解説されていますので割愛させていただきます。

 

   【参考】 財務省・「令和5年度税制改正(案)のポイント」 2 資産課税(5~6頁)

 

 

 まず、今回の改正のポイントは昨年末にこのブログでも触れた通り次の3つです。

 

〔Ⅰ〕相続時精算課税制度に現行の特別控除(最大2,500万円)とは別に年110万円の基礎控除(非課税枠)を創設し手続きを簡素化

 基礎控除以下の贈与なら贈与税の申告は不要、かつ将来相続が発生した時に相続財産に足し戻す必要もなし

 

〔Ⅱ〕暦年課税制度における相続税の生前贈与加算期間が3年から7年に延長

 相続人等が被相続人から生前に受けた贈与財産を相続財産に加算する期間を相続開始前7年に延長

 (但し、相続開始前4年~7年の贈与財産については100万円まで控除)

 

〔Ⅲ〕教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置を各々延長

 教育資金は令和5年4月以降の贈与に適用期限を3年延長、結婚・子育て資金は適用期限を2年延長

 (教育資金の使い残しについては、新たに贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超える場合は受贈者が23歳未満であっても相続税の課税対象、またいずれも贈与税が課される時は一般税率を適用)

 

 概ね想定通りではありますが、今回の改正でサプライズだったのは何と言っても〔Ⅰ〕の『相続時精算課税制度』に非課税枠が設けられ、その部分は将来相続財産に足し戻すことも不要とされたことでしょう。

 確かに今まで『相続時精算課税制度』はデメリットの方が目立ってあまり利用されてきませんでしたが、今回の改正で同制度が『暦年課税制度』に比べて優遇されているのは明らかで、同制度をもっと積極的に利用するよう国が政策的に誘導しているようにも受け取れます。

 その真意は定かではありませんが、そもそもの発端が『相続税と贈与税の一体課税制度』にあったことを考えると、国は将来的に贈与税から『暦年課税制度』を廃止し『相続時精算課税制度』に一本化することを見据えているのかもしれませんね。。。あくまで個人的な意見ですが。。。

 

 後編では、今回の改正(主にⅠ項・Ⅱ項)によって将来の相続に備えて行ってきた今までの生前対策やこれからの対策にどのような影響があるのかを整理します。